第6章 株価の安さから、企業の割安さを見るようになるまで

株価の安さから、企業の割安さを見るようになるまで 株式投資

投資を始めた頃の私は、株価そのものが安い銘柄に目を向けることが多くありました。

1株数百円なら買いやすく、これ以上はあまり下がらないのではないか。今振り返ると、そんな感覚で銘柄を選んでいた部分もあったと思います。

しかし、投資本や雑誌を読むうちに、PERやPBRという指標を知りました。

なかでも興味を持ったのが、企業の純資産に対して株価がどの程度に評価されているかを表すPBRでした。同じ株価でも、企業が保有する資産や利益によって、本当の割安さは異なります。

それまでの「株価が安い」という見方から、「企業の価値に対して株価が安いか」という見方へ、銘柄選びの基準が少しずつ変わっていきました。

ただし、低PBR銘柄への投資は、すぐに結果が出るものではありませんでした。

数字のうえでは割安に見えても、市場から注目されなければ、株価が何年も動かないことがあります。企業価値がいつ評価されるのか分からないまま、保有を続ける時期もありました。

そんな低PBR銘柄が、近年になってようやく日の目を見るようになりました。

東証が上場企業に対して、資本コストや株価を意識した経営を求めるようになり、低PBR企業にも変化が見られるようになったためです。さらに、TOBやMBOによって、それまで市場で低く評価されていた企業の価値が見直されることもありました。

私が保有していた銘柄のなかにも、こうした流れを受けて株価が大きく上昇した企業があります。製造業や社会インフラに関わる企業など、世間では地味に見られやすい会社が中心でした。

ほかにも、生活に身近な商品を長年作り続けてきた企業への投資が、大きな上昇につながったことがあります。いずれも派手な成長企業ではありませんが、社会や暮らしを支え、これからも必要とされるものを生み出していると考えたことが、保有する理由の一つでした。

もう一つ、銘柄を選ぶうえで見ていたのが配当です。

当時は、何%以上の配当利回りが欲しいと厳密に決めていたわけではありません。それでも、株価に対する配当利回りを見ることで、買うタイミングや値頃感を測っていたように思います。

そして振り返ると、配当があったことは、割安な銘柄を持ち続けるうえでも大きな支えになっていました。

株価がなかなか上がらなくても、保有している間に配当を受け取ることができれば、待つことにも意味を感じられます。もし配当がまったくなければ、市場から評価されるまで何年も持ち続けるモチベーションは保てなかったかもしれません。

こうした経験から、低PBR銘柄を探すことに手応えを感じる一方、PBRだけでは判断できないことも学びました。

PBRが低い企業には、業績が伸びていない、資産を利益につなげられていないなど、評価されない理由がある場合もあります。実際に、割安だと思って購入しても、そのまま株価が動かなかった銘柄もありました。

振り返ってみると、現在の私が見ていることは、それほど複雑ではありません。

その会社が何を作り、きちんと利益を出しているのか。そして、財務のバランスを保ちながら、配当を安定して出しているのか。

PERやPBRなどの指標は、企業を探すための大切な手掛かりです。しかし最終的に見ているのは、数字の向こう側にある事業そのものです。世間では地味に見える会社でも、社会から必要とされるものを作り、利益を上げ、株主への還元を続けている。私は、そうした会社を好んで選んできたように思います。

株価が安いことと、企業が本当に割安であることは違います。そして、割安な企業がいつ評価されるかは分かりません。

それでも、配当を受け取りながら、企業の価値が評価されるのを待つ。この経験が、現在の私の投資にもつながっています。

こうして自分なりの銘柄選びの基準を持つようになりましたが、その後、市場全体が大きく崩れる場面を経験します。どの銘柄を選ぶかだけでなく、資産が大きく減ったときにどう向き合うかを、初めて問われることになりました。

今回の格言

「人の行く裏に道あり花の山」

多くの人から注目されていない企業のなかにも、社会に必要とされる価値を持つ会社があります。目先の人気だけでなく、企業の価値を自分なりに確かめることが、現在の銘柄選びにつながっています。

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