投資を続けるなかで、私はIPOにも申し込むようになりました。
IPOとは、企業が新たに株式市場へ上場するとき、上場前に株を購入できる仕組みです。当時の私は、大型IPOなら株価が何倍にもなるような上昇は期待できなくても、高い確率で公開価格を上回るものだと考えていました。
そのようなイメージを持った背景には、投資経験の長い先輩方からよく聞いていたNTT上場の話があります。
上場当時の盛り上がりや、購入した人が利益を得た話を聞くうちに、知名度の高い大企業のIPOには安心感があり、値上がりも期待できるという印象を持つようになりました。ネットにもIPOは利益を得やすいという情報が多く、私はそれを十分に確かめないまま鵜呑みにしていたところがあったと思います。
そのような考えで申し込んだのが、JR九州のIPOでした。
知名度が高く、生活のなかでも身近に感じられる企業です。大型IPOなら大きく値を飛ばさなくても、堅実に値上がりする可能性は高いだろうと考えていました。
幸運にも購入することができ、上場後の株価は公開価格を上回りました。すぐには売却せず、しばらく保有してから利益を確定しました。
この成功によって、私が漠然と持っていたIPOへのイメージは、確信に近いものへ変わっていきました。
「やはり大型IPOは利益が出やすい」
「有名企業なら大きく失敗することはない」
短い期間で利益が生まれる感覚に、少し酔っていたところもあったと思います。そして、その成功体験を持ったまま参加したのが、ソフトバンクのIPOでした。
ソフトバンクも誰もが知る大企業です。JR九州で利益が出た経験もあり、今回も大きく上昇することはなくても、公開価格を下回る可能性は低いだろうと考えていました。
しかし、結果は予想とはまったく違いました。
上場当日、初値は公開価格を下回って付き、その後も株価はみるみる下がっていきました。公開価格を下回るスタートを目の当たりにし、損失がさらに広がるのではないかと不安になりました。
私は初値が付いたところで、保有していた株の一部を成り行きで売却しました。一方、残りについては、しばらく待てば株価が戻るかもしれないと考え、そのまま保有しました。
しかし、思うようには回復せず、残していた株でも損失が膨らみました。最終的にはすべて売却し、損失は月給に近い金額になりました。
ところが皮肉なことに、私がすべて処分してしばらくすると、株価はIPOの公開価格付近まで戻しました。結果だけを見れば、私は安値圏で手放してしまったことになります。
「大型IPOなら値上がりするだろう」と思い込んで購入し、実際に値下がりすると不安になって売却する。そして、すべて売った後に株価は戻っていく。今振り返ると、値下がりした場合の方針を何も持っていなかった、経験の浅さがそのまま表れた売買だったと思います。
もちろん、その後に株価が戻ることを予測できたわけではありません。問題だったのは、IPOに参加する前に、株価が下がったときはどうするのか、どのような条件なら保有を続けるのかを決めていなかったことです。
値上がりする場面だけを思い描いていたため、予想と反対に動いたとき、冷静に判断できませんでした。
振り返ると、もともとは先輩方から聞いた過去の成功談やネットの情報から作り上げたIPOへのイメージでした。それがJR九州で実際に利益につながったことで、自分の考えは正しかったと思い込んでしまったのです。
この失敗以降、私はIPOだから値上がりするとは考えなくなりました。知名度や過去の成功例だけで安心せず、企業の内容や公開価格、上場時の条件、市場からの評価を自分でも調べてから判断するようになりました。
成功体験は自信になります。しかし、ときには失敗以上に判断を曇らせることがあります。
投資では、前回うまくいったという事実より、今回の投資先を改めて見直すことが大切です。JR九州で得た利益とソフトバンクで出した損失は、そのことを強く教えてくれました。
今回の格言
「二匹目のドジョウはいない」
一度うまくいった方法が、次も同じように通用するとは限りません。前回の成功体験に頼らず、今回の投資先を改めて見直すことが大切だと学びました。
※本記事は、筆者自身の資産形成に関する経験や考えを記録したものであり、投資や特定の金融商品の購入を推奨・勧誘するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

